行きに来た道を思い返すと来る途中に交番があったことを思い出した。
そこまで行ってお巡りさんに助けてもらおうと思った。
文章では「助けてもらおう」と表現したが、この日は土曜日で日も暮れようとしている時間、病院と言っても救急外来を受け付けてくれるところでないといけないので交番で話を聞いてもらいあわよくばパトカーで病院まで乗せていってくれるのではないかと云う淡い期待を抱き取り敢えずそこまで何とか自力で行こうと決心したのである。
左手は薬指にティッシュを巻き付け、右手はジーパンのベルトに親指をかけた状態で腕が動かないようすれば普通に歩けることはできた。
問題は自転車
取り敢えずサドルにまたがり左手でハンドルをにぎる。
幸い指の痛みはそれほどなかった。
ブレーキもかけられる。(後輪ブレーキでよかった)
これなら漕げそうだと思った。
しかし今いる河川敷を出るには一旦土手を登り長いスロープを下って行かなければならない。
道幅も自転車が互いに1台ずつすれ違える程度の広さ途中対向車がきたら安全に交わす自信はなかったので、土手を超えるまでは自転車を牽いて歩くことにした。
片手でハンドルの中央を握り牽いて歩くことは意外と容易にできた。
そして土手から出た私は、殆ど交通の往来が無く民家もまばらな平坦な道をみて自転車に乗れそうと感じ再びサドルにまたがり自転車をこぎだした。
意外と安定して移動ができた。
むしろ歩くより肩に振動が伝わらないのではと感じた。
約500メートル程行くと幹線道路にでた。ここは夕方と言う事もあって交通量も激しい。
おまけに歩道があるとこや道幅が狭くなっていて歩道が無いとこもある。また段差を超える時に伝わる振動は今の私の肩には耐えられない。
「牽いて歩こう」
記憶では目的の交番はもうすぐと思っていたので(後で調べると300メートルであった)歩いてその交番に向かった。
日も完全に暮れ片側1車線の歩道も無い道、歩いて自転車を牽いている私の横を自動車や自転車、通行人がすれ違っていく、寂しく点々と光る街灯とすれ違いざまの自動車のヘッドライトの明かりだけが私を照らす。そんな道を右肩をかばいながら歩いた。
交番は駅前と言う事もありいきなり辺りが明るくなっていた。
「着いたぁーー」
と感じた駅を横目に回り込む様な位置に交番はある。
交番の脇に自転車を置き、交番のガラス戸を開け交番に入った。
中には二人のお巡りさんがいた。
「すいません。自転車で転んで怪我したんですがこの近くに病院ありますか?」
と入口のカウンター越しにいたお巡りさんに声をかけた。するとそのお巡りさんはカウンターの上に地図を載せて地図上の病院を指さしながら、
「この辺で大きな病院と言うとココかな~ 歩いて7~8分」
と教えてくれた。私は内心やっとの思いでここまで辿り着きこれ以上自力で移動することはきついなーと思っていた。
そこで少しでも今の私の状態を知って欲しいとの思いからか転んだ時の状況や肩が動かせない事を説明すると
「それなら自分で救急車呼んで行った方が良いよ。」
甘かった!餅は餅屋である。
私はそのお巡りさんから教えてもらった病院の名前は聞いた事があって、それなりに大きな病院であることを知っていた。
そこなら救急外来も受け付けてくれるだろう。
そう思ってもうひと踏ん張りと決意を固めたが、やはり自転車だけは邪魔だと思った。
「あのぉー 歩いて行くので自転車預かってもらっていいですか?」
尋ねた。
「あぁー 自転車なら駅前に駐輪場があるからそこに預けて行って」
言葉が無かった。
礼をして交番を出た私は再び自転車を牽いてお巡りさんが教えてくれた道を歩き始めた。
今の私にとってほんの少しの距離であっても辿り着いた道を戻るという事は精神的にも辛くなぜか自転車を牽いてでも先に進むことを選択したのであった。
道は少々上り坂で相変わらず道は狭く歩道はない、おまけに他に抜け道が無いせいなのか大型トラックがよく行き交う
車だけならまだ良いが、そこに自転車や歩行者が前からやってくると右肩をかばって歩いている私は交わしようが無い。
ただじっとして相手がやり過ごすのを待つのみとなる。
そうこうしてひたすら歩いて行くと急に道幅が広くなり息子が先回りして自転車で走って行き病院を見つけ戻ってきた。
その息子に追い付く頃、私にもその病院が見えてきた。あともうすこし、ちょうど丘の上に建つ病院
そこは大きな交差点で丁度横断歩道渡った向かいの角地一体が病院の敷地になっている。
結構大きな病院で建物自体まだ新しい綺麗な病院との印象を受けた。
「入口どこだぁ」
とつぶやきキョロキョロしていると息子が先に見つけ案内してくれた。駐車場も広く門から受け付けのある入口まで50mm位はあった。
受け付け自体は閉まっていたが脇に目をやると救急外来の矢印がかかれた看板があったので
自転車を駐輪場に止めそこにむかった。
通常の洒落た受け付け玄関と違って物寂しい通路を通って救急外来の窓口に向かった。
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